資金調達方法 | 概要 | 金利など |
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補助金・助成金 | 国や地方自治体が医療機関向けに提供している補助金や助成金 | – |
金融機関等からの融資 | 日本政策金融公庫、商工中金、民間金融機関などからの融資 | 1.3%〜15% |
福祉医療機構(WAM)からの融資 | 医療機関等に融資を行う事業を展開している厚生労働省管轄の独立行政法人 | 0.2%〜 |
自己資金や身内からの借入れ | 経営者自身や医院が保有している資金、経営者の身内からの借り入れ | 0%〜 |
資産売却 | 経営者自身や医院が保有している資産の売却益 | – |
不動産流動化 | 不動産を運用し、将来の運用益を証券化して投資家に売却する | – |
医療機関債 | 債券を発行して投資家から融資を受ける | 1.0%〜 |
リースバック | 資産を売却して使用料を払いながら使い続ける | – |
診療報酬ファクタリング | 診療報酬債権を売却して資金に替える | 1.0%〜 |
国や地方自治体が医療機関向けに提供している補助金や助成金を活用する方法です。
メリットは負債ではないので返済がいらない点です。また、補助金や助成金には審査があり、事業計画をしっかり立てないといけません。その過程で事業計画が見直され、ブラッシュアップできるという副次的なメリットもあります。
デメリットは対象となる事業者の条件が細かく決められている点です。また、手続きが複雑で大変なケースも多く、説明会への参加から始めて書類の作成や面接などさまざまな作業が必要になります。
日本政策金融公庫、商工中金、民間金融機関などから融資を受ける方法です。
借入限度額が大きく、数千万円から1億円まで融資してもらえます。また、一旦信頼関係を築けば中長期的な支援が受けられるのもメリットです。日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、金利が低く抑えられています。
デメリットは審査が厳しく時間がかかる点です。特に日本政策金融公庫は金利が低いぶん厳格に審査されるため融資まで数ヶ月かかる場合もあります。
福祉医療機構は医療機関向けへの融資を行っている厚生労働省管轄の独立行政法人です。
福祉医療機構から融資を受けるメリットは、融資の上限金額が高い点、金利が低い点です。金利0.2%で上限金額は最大7.2億円まで借りられます。
デメリットは不動産担保の抵当権を他の金融機関に優先して第一位にしないと借りられない点です。もし民間の銀行などからの借り入れですでに不動産を担保にしている場合、その銀行に抵当権順位引き下げの承諾を得なければいけません。これはなかなか簡単にはいかない場合が多いです。仮に承諾が得られても銀行の心証は悪化するでしょう。
経営者自身の資金や身内から資金を借り入れて経営資金にする方法です。
自己資金のメリットは返済や利息、配当金の支払が不要で、財務状態も悪化しない点です。身内からの借入の場合、返済は必要ですが、利息や配当金は不要である場合が多いです。また、使用用途が自由である点もこれらの手段のメリットでしょう。
自己資金のデメリットは事業を精算したときに自分のお金が無くなってしまう点です。また、個人のお金なのでそんなに多額のお金を出せないのもデメリットです。
身内から借り入れる場合もそんなにまとまった金額は借りられません。また、お金の貸し借りは関係にヒビが入りやすいのもデメリットです。
病院が保有する資産を売却して資金調達する方法です。
メリットは負債が発生せず返済の義務も無い点です。また、資産の維持費が削減できる点もメリットでしょう。
デメリットは資産を利用できなくなる点と、思うように売れない場合がある点です。
不動産流動化は別名「不動産証券化」とも呼ばれます。病院とは別の不動産を運用する事業体を設立しその運用益を証券化し、投資家に売って資金調達する方法です。
メリットはその名の通り、不動産の流動性が高まる点です。不動産は有価証券と比較して流動性が低い、つまり売買がしづらい資産だとされています。その不動産の利益を証券にすれば、流動性を持たせられるのです。
デメリットは契約手続きが複雑で管理が難しい点にあります。また、証券化できる物件は限られているのもデメリットです。
債券を発行して投資家に買ってもらって資金を調達します。
メリットは無担保・無保証で借りられる点と、長期的な資金が確保できる点です。
デメリットは設備資金にしか使えない点です。また、厚生労働省からガイドラインが出ており「3年連続の黒字決算」「発行額が1億円以上の場合は監査法人の監査が必須」など、さまざまな条件が課されている点にも注意が必要です。
病院の設備や資産などを売って、売った後は使用料金を払いながら使い続ける方法です。
メリットは設備や病院の環境などを変えずにまとまった資金が手に入る点と、負債が発生しない点です。
デメリットは使用料金を払わなければならない点です。しかもこの使用料金は同一条件の資産に比べて割高である場合が多いです。
診療報酬債権を売却することで資金を調達する方法です。
担保や保証人が不要で、着金までの期間が非常に短いのがメリットです。早いところでは即日に現金化可能な業者もあります。また、あくまでも売買契約であり、借り入れにならないので信用情報が悪化しません。
デメリットとしては手数料を払う必要がある点が挙げられます。ただ、診療報酬ファクタリングの場合は債権の信用力が高いため、手数料は比較的安く抑えられる傾向にあります。
医療機関の資金調達は一般的には難しいとされています。なぜなら、医療機関の運営には大きな資金が必要になる一方で、資金調達手段は限られており、なおかつ、医療法の規定により収益事業もしにくいといった制約があるからです。
したがって、医療機関の資金調達は余裕を持って事前に計画を立て、調達手段の特性の違いを理解した上で、自院の状況にあった手段を選びましょう。
直接金融と間接金融の違いを理解しましょう。
金融の種類 | 概要 |
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直接金融 | 投資家から直接借りる。医療法人債、不動産流動化など |
間接金融 | 間接金融 金融機関から借りる。銀行融資、福祉医療機構など |
直接金融は、不特定多数から多額の資金を調達できますが、手続きが難しく、コストもかかります。
間接金融は、比較的手軽に利用できる反面、担保や金融機関に対する信用力が必要になります。
診療報酬ファクタリングはあくまでも債権の売買であって、金融(借り入れ)ではありません。したがって、財務状態や信用力に影響を与えないのがメリットです。
しかし、実質的な金融取引を「ファクタリング」と称してサービス展開している悪質な業者も中には存在します。そのファクタリング契約がちゃんと「売買契約」になっているのか、契約書をよく読んで判断しましょう。ファクタリング業者の信頼性が大事です。
よりよい医療サービスを提供するには潤沢な資金が必要不可欠です。しかし、医療機関はたくさんの資金が必要になるわりに資金調達の方法が限られています。そのため、資金調達方法の種類をよく理解し、戦略的な資金繰りをしましょう。参考にしていただければ幸いです。